生理のある女性は、50歳ごろに閉経を迎えます。
そして閉経の前後10年間には、更年期という時期を経験することに。
更年期、つまり40代半ば〜50代前半にかけて、女性の身体には様々な変化が現れます。
「デリケートゾーンがこすれて痛い」
「尿もれや頻尿が気になる」
このような、更年期やその後にデリケートゾーン周辺で起こるさまざまな症状を総称して、「GSM(閉経後泌尿生殖器症候群)」といいます。
GSMは、2014年に国際女性性機能学会と米国更年期学会で提唱された新しい考え方です。そのため、日本では聞き馴染みがない方もいるのではないでしょうか。
ですが、今まで病名が曖昧だっただけで、症状自体は古くから多くの女性を悩ませてきたものばかり。
具体的には、GSMの症状は次の3つにグループ分けされています。
・性器症状
・性交関連症状
・下部尿路症状
性器症状としては、それまでも腟の乾燥や萎縮についての「外陰腟萎縮症」というものがありました。
女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が減り、腟やデリケートゾーンが乾いて硬くなるもの。
さらに萎縮することで、ヒリヒリやかゆみにつながるのが主な症状です。
ただ、これはこの時期の女性に起こる身体の変化のほんの一部にすぎません。
GSMの代表的な症状は次のとおり。
一人で悩んでいた小さな不調も、実はGSMによるものかもしれません。
【性器症状】
・乾燥
・かゆみ
・灼熱感
・ニオイ
・ゆるみ
【性交関連症状】
・性交痛
・性交時の潤滑不足
【下部尿路症状】(膀胱と尿道のこと)
・頻尿
・尿意切迫
・尿もれ
腟が乾燥して萎縮すると、すぐ近くの尿道のゆるみに影響して尿もれにつながることも。
また、腟付近が乾燥して粘膜の機能が弱まると、雑菌に対しての抵抗力が低くなり、膀胱炎など尿路感染の原因に。
肛門もまた腟と近いパーツ。肛門周りの乾燥は排便時の痛みにつながってしまいます。
こうして更年期には、デリケートゾーン周辺にさまざまな症状が連なって起こりやすくなります。
腟の乾燥や萎縮に目を向けるだけでは、同時期に起こりうる他の症状への対応が遅れてしまうことも。
大切なのは、これらの症状は、「単体で起こっているわけではない」ということ。
更年期に起こるデリケートゾーンで起こる変化を1つずつ解決するのではなく、総合的に改善することが必要。
それがGSMの考え方です。
デリケートゾーンの変化は誰にでも起こることです。
放っておいて治るわけでなく、今後の人生で付き合いが長くなる可能性も。
だからといって「ずっと悩むことになるなんて」とネガティブになる必要はありません。
女性の身体で何が起きているのか。
正しく理解し、GSMを予防・改善するために体質改善していきましょう。
GSMの対策には、日々の行動やセルフケアで体質改善を目指すことが大切です。
今日から試せることもあるので、ポイントをぜひチェックしておきましょう。
◾️乳酸菌を減らさないライフスタイルを
腟内には乳酸菌が棲んでいます。
乳酸菌のうち多くの割合を占める「ラクトバチルス属乳酸菌」が作る乳酸は、腟内環境を正常にする働きを持っています。
このような乳酸菌を減らさない対策として、例えばデリケートゾーンを洗いすぎないことが大切。
腟の中を洗うための洗浄剤が販売されていますが特別な理由がなければ、腟の中は洗浄しなくても大丈夫。
腟に有用な乳酸菌まで流れてしまうためです。
トイレに行くたび、ビデ機能を使うのも洗いすぎの原因に。
腟内を洗い流すのは、生理などでどうしても気持ちが悪い時にとどめて腟内に棲む乳酸菌を減らさないようにしましょう。
また、サプリメントで口から乳酸菌を補うのも効果的です。
◾️骨盤底筋をトレーニングする
GSMの中でも、腟のゆるみや、頻尿、尿もれといった症状にアプローチする方法です。
骨盤底筋は尿道・腟・肛門を囲む小さな筋肉の集まりで、体幹を支える土台のような役割。
骨盤の内側にハンモックを張るように張っていて、尿道をギュッと引き締めています。
ですが骨盤底筋がゆるむと尿道を締める力が低下し、尿もれなどにつながるのです。
また、腟のゆるみにより、お風呂のお湯や空気が入ってしまうことも。
これらの悩みには、腟や肛門をキュッと締めたり、ゆるめたりするトレーニングが効果的。
コツをつかめば、家事中などもいつでもこっそりトレーニングできるでしょう。
◾️粘膜の潤いを高める
粘膜の潤いを保ち、乾燥からくるヒリヒリ感などを防ぎましょう。
そのためには栄養を意識することがポイント。
例えば、粘膜や皮膚の健康を守るにはビタミンAがおすすめ。
ビタミンAは、にんじん・ほうれん草・卵黄などに多く含まれています。
効率よくビタミンAを摂るには、サプリメントの力を借りましょう。
GSMについては、クリニックや医師によって理解に差があるのが現状です。
そんなときGSMのことを知っておけば、もしかしてと疑い、体質改善を始められます。
更年期時期に少しでも不調を感じたら、ぜひケアを始めましょう。
GSMによる悩みは、放っておくとさらに深くなってしまいます。
この先の人生で自分が1番長く付き合うことになるのは、自分自身の体です。
腟を洗いすぎないようにしたり、トレーニングをしたり、栄養を摂ったり。
いつまでも快適に過ごせるよう、身近なことから取り組んでみませんか?